市民のための文化財保存

 「鳥取市の区域内に存する文化財(国又は県の指定するものを除く。)のうち、市にとって重要なものを保存及び活用し、市民文化の向上に資するため、必要な事項を定めることを目的とする」(鳥取市「文化財保護条例」第1条より)

 

「市民文化財ネットワーク鳥取」が提案しているのは国の史跡ではなく、市ないし県の史跡としての指定である。岡崎平内の地方史上の業績が、市の史跡に相応しくないという議論があり得るのであろうか?地域の文化遺産は、国の文化遺産とは異なる地域の特徴に合った評価尺度で選ばれてもおかしくはない。

 

旧岡崎邸や池内邸は、その所有者や居住者が建物に何らかの愛着を感じていたからこそ残されてきたものと考えられ、その周辺の人々もまた、その建物の存在を前提に町の姿を描いてきたものと考えられる。しかし、その他にも多くの建物がこれら災害を潜り抜けて生き残っており、人々に愛され、維持されてきている。

こうした建物には人々の生活に対する工夫がこめられており、そこに住んだ人々の細かな心配りの積み重ねが残されている。そして中には今日再度同じ物を建てようとしても入手することの困難な用材、技術が使われており、貴重な遺産と認められるものが少なくない。これらの歴史的な遺産を維持することは今日大変難しくなってきている。

 

今回の調査報告を兼ねて旧岡崎邸、池内邸の見学会を開催したところ200人以上の参加者があり、市民の関心の高さが明らかとなったが、それは市民が地域の歴史遺産を尊重し地域に対する誇りを持ちたいと願っているものと感じられた。

 

鳥取に残された歴史的遺産は確かに少ないので、今日わずかでも残っているこれらの遺産の保存を積極的に行う必要がある。こうした遺産の文化的価値を認め積極的な維持支援策を施すことで、地域住民が地域に対する誇りを取り戻し、域外の人々を招き、その誇りを示すことが出来るようになることが地域活性化につながるものと期待される。