鳥取市の文化財施策

市の委託による『旧岡崎邸・池内邸建造物調査』の報告書や「市民文化財ネットワーク鳥取」の提案を受けて、去る2003(平成15)年1月31日に市教委の「文化財審議会」が開かれ、旧岡崎邸と池内邸の文化財としての価値判断等についての審議が行われた。この会議は非公開とされているため、出席委員がどのような議論を交わして審議を行ったのかを公に知ることはできない。しかし、同年2月12日の日本海新聞の報道によると、「委員からは『(文化財としてふさわしいかどうかは)相対的な評価を行わないことには価値も判断できない』などと慎重な審議を求める意見が上がった」(当該記事より抜粋引用)そうで、継続審議されることになった。つまり、結論は保留されたのである。

 

 新聞報道を見る限り、結論保留の最大のポイントは「相対的な評価」である。

 現在、鳥取市の文化財(表1)として指定を受けている建造物は、県庁前・尚徳町の「箕浦家武家門」しかない。これは、鳥取城の堀端にあった旧鳥取藩士箕浦氏の門を移築したものであるが、堀端にあった当時と現在とでは形態も部材も大きく変容している

(写真1 現在の武家門の様子   写真2 S10年の武家門の様子   写真3 S12の武家門の様子 )。

 

 

旧岡崎邸も多くの改変が見受けられるが、武家門の例を考える限り、改変の多さは保留の根拠には当たらないだろう。

                        

一方、鳥取市には数多くの古代遺跡が存在するが(表2)、このうち市の史跡指定を受けているのは、湖山町の大熊段1,2号墳(市史跡)、橋本の橋本38号墳(市史跡)だけである。縄文・弥生・古墳時代の歴史の足跡すら市として保存に積極的とは言えないのに、江戸から明治に掛けての人物の住居などを史跡などにできるはずがないということなのであろうか?