歴史散策路による鳥取ルネッサンス

 生活文化は人々の生活における工夫の蓄積であり、その具現化された姿は歴史遺産に認められる。古い文化を知った上で新しい文化を生むというのがルネッサンスの基本である。鳥取市民における新たな生活文化の育成は、市民が地域の歴史を知り、それに誇りを抱くことであり、そのための第一歩は、市民が歴史古い文化を形にした歴史的文化財に触れる機会を増やすことである。このための方策として既存の歴史遺産を有効活用した「鳥取歴史散策路」(通称「とっとり歴みち」)の整備を提案したい。歴史散策路の整備は、市民のためでもあるが、歴史遺産を観光資源とするものでもある。古い文化によって地域に誇りを持つ市民は、観光客の受け入れに積極的になるものと期待される。

鳥取県庁の裏手にある久松山の麓の山の手地帯は、鳥取市で最も歴史遺産の密度が高い地域である整備対象地として相応しい条件を具えている。既に何等かの形で指定ないし登録されている文化財を挙げると次の通りとなる。

 

 

既往の文化財

1)     久松山城址:国の史跡

2)     仁風閣: 国の重要文化財

3)     興禅寺: 市の名勝

4)     樗谿神社東照宮: 国の重要文化財

5)     観音院: 国の名勝

6)     吉村邸: 国の登録文化財

 

l         散策路には多くの社寺があるが、各々が何れも由緒正しく、多くの有名人の墓がある上に鳥取の歴史を示す各種の碑文が点在する。

l       この一帯には更に鳥取の水道の起源、鳥取最初の電力設備など鳥取市における生活近代化の歴史遺産も豊富にある。

 

 

今後指定すべき文化財:

l         旧岡崎邸: 天保時代に経済的危機に見舞われた因州藩の財政を極て短期に立て直した5代目によって建てられ、廃藩置 

            県後島根県に併合された鳥取県を再置する運動を行い、後に初代の公選鳥取市長となった7代目まで3代に 

            わたって使われた旧宅。

 

l         池内邸: 藩政時代の政商高砂屋の流れを汲む商家。一部江戸時代の建物で基本は明治25年建設の町屋。樗谿神社を下

           った延長上の元大工町通りに位置する。

 

l         岸根邸: 元家老、福田丹波の武家屋敷。主屋、庭園と茶室を江戸時代のままの姿で残す。智頭街道の基点に位置す 

           る。

 

これらを新たに何等かの文化財指定を行うと天徳寺から吉村邸までの散策路に枝が生え、智頭街道から元大工町通り、上魚町通りを経て若桜街道までがつながる。このようにすると人々の足が歴史の散策路に向き易くなる。

このような散策路の整備は、更に多くの文化遺産を見出す切っ掛けを生む。これらの文化遺産と触れる機会を増すと、市民の郷土に対する誇りを一層増し、鳥取に真のルネッサンスをもたらすものと期待される。

 

 国指定重要文化財                  国指定重要文化財

国指定名勝

仁風閣長田神社興禅寺等――旧岡崎邸――おおちだに神社−観音院等――吉村邸:国登録文化財

 

岸根邸:県指定名勝(新規)                池内邸:国登録文化財(新規)

県指定史跡(新規)

 

 

 

整備手法

この歴史散策路を人々に親しまれる通りとするためには基本的に次のような事項の整備が必要と考えられる。

整備項目

1)     旧岡崎邸 史跡指定・修理・活用計画立案・活用計画実施

2)     池内邸 国登録文化財・修理・活用計画立案・活用計画実施

3)     岸根邸 県指定名勝−国指定名勝・修理・活用計画立案・活用計画実施

4)     散策路保全 無名墓碑等有名化・史跡指定 植栽・標識・案内板・休憩場所

5)     文化財周辺整備 大工町通り(池内邸〜青木邸・市役所)の活性化基盤整備

これらの中で、旧岡崎邸並びに池内邸については次のような活用を行うことによってこの散策路を一層有意義なものとすることが可能となるものと期待される。

旧岡崎邸: 武家文化伝承館として整備

 武家住宅建築技術の伝承(地域産材・地域技術・技能による建築技術)

 武家の衣食住を伝承(地域産材・地域技術・技能による衣生活・食生活・住生活)

 武術(精神と技)の伝承(鳥取独自の精神の普及)

池内邸: 町民文化伝承館として整備

 町屋建築技術の伝承

 町民の衣食住の伝承

 接待術の伝承

これらは、散策路の中心的な休息の場所となり、訪れる人々相互や住民との交流の場になるだろう。

 

歴史散策路整備の効果−新たな生活文化の創生

このように地域の歴史に対する市民の関心が深まれば、市民は、一方において埋もれた歴史遺産の発掘に努め、他方において地域の歴史からヒントを得て自らの生活の改善に努めることとなろう。このよう中から新たな生活文化が芽を吹くものと期待される。新たな生活文化は、観光の資源そのものとなるし、資源を生み出す原動力ともなる。

 

観光資源の増大

この鳥取歴史散策路は、市民のためばかりでなく、歴史遺産を観光資源とし、観光客誘致の道具となる。自然と訪れる人を増やし、訪れる人々相互に交流する場の整備が観光客の増加を生む。補助的な事業著して、この他に次のような各種事業の実現方法を検討する。

 

市内ガイドマップと標識の整備:

     自分の居場所、方位が判るシステムを整備する。

休憩所・トイレの整備:

     鳥取の名産・土産を開発する

観光ガイド制度の確立: 

     観光ガイドを養成する

     ヴォランタリーガイドシステム

     ルート麒麟獅子バスにガイドを付ける

観光タクシーシステムの確立:

     観光タクシールート毎に定額料金を設定する

           タクシー運転手向け観光ガイド研修を行う